回路図も設計図もないところからはじまるリペア技術 ハードオフオーディオサロンのエンジニアに聞く、 こだわりと匠の技!

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10月号

※このレポートは、stereo 2021年10月号に掲載された記事ではページ数の都合でやむなくカットした部分を含む、取材記事の「完全版」です。(写真・文 編集部)
※展示されている商品は、取材当時のものです。販売品のため、当記事公開時・来店時には成約済みとなっていることもあります。

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森を見てから木、枝、葉を見る。最後は経験と知識がモノを言うリペア技術

一口に中古品と言っても、購入当時の性能を保ったまま問題なく使用できる製品と、動作はしているものの購入当時の性能を発揮できておらず、それでもなんとか動いているもの、あるいは動作不能となってしまったものなど、いくつか種類がある。後者は、中古市場が活発となった昨今、オークションをはじめとした個人売買などでも多く出回っているようだ。

大手リユースチェーンであるハードオフのオーディオサロンでは、オーディオ製品の整備を行なって販売しているが、状態がそれぞれに異なる機器をどのように整備しているのだろうか。今回は、なかなか知ることができない修理(リペア)の裏側を覗いた。

「私たちが買い取るオーディオ機器は、2~3年前の比較的新しい整備不要の製品もありますが、半世紀以上前に作られた電源も入らないものや、電源が入っても本来の性能を発揮できていない製品も多くあります」と店長の宮澤氏は語る。

ラックスマンのキット「KMQ7」。キットなので、配線の状態はお客様によって個人差が大きい。きれいに作られている場合もあるが、そうでない場合もある。後者の場合は、最初から線を繋ぎ直している。

実際にアンプの修理をしていたエンジニアの神野氏に話を伺った。「基本的な回路は同じなんですよ。各メーカーで味付けはされているものの、基本を掴んでいれば大体は分かります。例えば……」と、ちょうど整備中のアンプの中身を見せてくれた。 ラックスマンのキット「KMQ7」だ。それこそ半世紀以上前となる1966 年に発売された真空管アンプキットで、当時の大卒初任給が約2万円の時代に19,800 円で販売されていたものである。「最初は配線がごちゃごちゃしていて、信号の流れが見えない状態だったんです。流れてきた信号がどこに入るのか分かりませんでした」と、リペア前後を写真で比較して説明してくれた。「整備後の配線が少なくなったように見えるのは、効率的に配線し直したからです。これも自分で回路図を起こして、作業を行ないました」と、神野氏自らが作成した回路図を見せてくれた。

修理を請け負うお店でも、場合によっては回路図がないと対応できませんと言われてしまうことがあるが、ハードオフオーディオサロンでは、回路図が手に入らない場合は自分たちで作って、製品をきちんと把握してから修理をするという。これは根気と知識が必要な、実に地道な作業だ。

また、リペアでは使用する部品も重要なポイントとなる。部品が古くてもそのまま使える場合ももちろんあるが、全部が全部を替えてしまうと当時の雰囲気とかけ離れたものになってしまう。一方で、安全性の確保を考慮すると、どうしても部品や、場合によっては回路も変えざるをえない場合も出てくるという。「(機器に使用されている部品は)当時と今のものとでは違いがあるので、いかに当時の雰囲気を出せるように今の部品を使っていくか、調整や匙加減が求められますね。ヴィンテージ専門店はオリジナルの音を求めて修理を行なうと思うのですが、そこを追求するとコストもかかりますし、今となっては入手できない部品もあります。なので、当時のエンジニアが『もし当時に、今の最新の部品があったらこれを使うだろう』というようなものをチョイスするように心がけています」と、修理の心得を教えてくれた。

ハードオフオーディオサロンの特長は、こういったヴィンテージものが直接試聴できる点にある。「お客様がお使いのスピーカーやプレーヤーの環境を、ある程度こちらで作って、そこにヴィンテージのアンプを入れたらどうかというのを実際にお客様の耳でご確認いただけるのは強みです」と宮澤店長。宮澤店長はターンテーブルやアーム調整全般の修理も担当している。「この仕事をするまで、修理ってひとつひとつ部品を見て悪いところを探しながら直していくものかと思っていたのですが、それでは本当の修理にはならないんですよね。森を見て、木、枝、葉を見るというような感じで、まずは全体を把握した上で修理すべきポイントを把握する。そうすることで『あ、ここが悪いということは上流のこちらも悪いのでは』という流れが見えてくるんです」と語る。

修理作業中だったFisher製(アメリカ)レシーバー(アンプとチューナーが一緒になったタイプ)。アメリカのその時代の雰囲気が伝わる。

アンプだけじゃない! カセットデッキのリペアもお任せ!

 消耗品のリペアも覗いてみよう。作業を行なっていたのは、超有名大手メーカーの本社開発部門で経験を積んでいた、カセットデッキなど駆動系を担当するエンジニア大林氏。「基本的にテストテープを使って機器の状態をチェックしているのですが、テストテープも貴重なので、私の場合は自作のミラーカセットも使用しています。これを使って、ヘッドのところでよれたりすり減ったりしていないかを確認します。これでレベル、スピード、アジマス、バイアスも調整しています。」

手前のテストテープと、奥にある測定器を使用してデッキのコンディションをチェックする。

自作というミラーカセットには、テープの上部が見えるように切り込みを入れて、その名の通りミラーを仕込んでいる。それを再生させながら、測定器を使って細部の状態確認を行なっている。

自作ミラーカセットを使用した測定の様子。

カセットやビデオデッキのトラブルはほとんどベルト系だが、消耗品であればなおさら、本来は定期的に交換や点検をやるべきだという。「レコードプレーヤーのベルトが伸びて交換するというのと同じですよね。」とアドバイスされていた。

一言にリペアと言うが、私たちが見えない部分では経験と知識に裏打ちされた匠の技が駆使されていることが分かった。

今回の取材時にリペアを行なっていたものと同機種のリペア済み商品、「TC-K777」。昨今のカセットテープリバイバルで、売れ行きは好調だという。この商品も、整備してウェブに情報を載せた翌朝にはもう注文が入っていたそうだ。

「私たちが付けた値段が相場になる」 どこでもやっていない中古を展開する試み -中古品に、付加価値をー

「TECHNICSの『SU-9600』があるのですが、これはつい最近私が整備した商品です。この商品の優れている点は、コンデンサのような消耗品を替えさえすれば繰り返し使えるということですね。一般的な半導体を組み合わせて使っているので、恐らく20年後でも修理は可能でしょう。こういった消耗品をしっかり替えていけば、いつまでも使えるでしょうね。これはとても好感が持てるコントロールアンプです」と神野氏。

整備済みのTECHNICSの「SU-9600」(1975年製)。骨太な音の印象だ。

こういった中古市場でなかなか出回らない商品は、修理できるところが少ない。その証拠に、型番で調べてみても整備されていてきちんと動作する個体の近年の相場は、なかなか出てこない。修理して中古相場があるものは調べれば相場がわかるが、履歴が出てこないものは、専門店でも扱わない場合が多い。そういった他社でやっていない商品も展開して、ハードオフオーディオサロンがつけた価格が相場価格になるということもあるようだ。

このコントロールアンプは1975年当時で175,000円というから、相当な価格だ。当時とても手が出なかったものの思い入れがあるという方にとっては、喉から手が出るほどのお宝といえるだろう。フォノ回路も充実している。不良・劣化コンデンサは交換済み、不良ハンダおよび基板パターンは修繕されているので、当時手が出ずにいた方には整備品が手に入るチャンスではないだろうか。

三栄無線製のコントロールアンプ・キット「SRP-200」。キット制作者が当時完成できなかったようなアンプでも整備・組み立てし直して店頭に置くようにしているという。
DYNACO(1958年)は比較的回路図が手に入るのと、それほど複雑ではないので修理はできるものの、古いのでその分修理に手間取ることはあるという。
1970年代、三洋電機が「オーディオの歴史に残る名機を作ろう!」と、当時の最高級のパーツをふんだんに使った贅沢なプリアンプ OTTO「DCC-3001」。

ここまで来ると、もはやこの人たちに直せないものなどないのではないだろうか……。そう思ってしまうが、基本的には自力で修理を行なうものの、どうしても手に入らない部品があったり、モジュールや手が出せないものがあったりした場合には潔く専門の修理業者に外注をすることになるという。

しかしながら、それでも自力でリペアができるというのは大きい。ご存知の通り、ハードオフオーディオサロンでは新潟にあるリペアセンターが受け入れ先となって、全国のハードオフ店舗全体としてコンディションが整った商品を提供する仕組みを築き上げたが、ひとつのお店で買い取りから修理、販売まで完結してできるのは、吉祥寺店と新潟店のみだ。

中古品として安く手に入る商品は世にあふれているが、その多くはほとんど整備がされていないものだろう。ユーザー自身で修理・整備ができるというのならば、それでもよいのもしれない。しかし、しっかりと整備してそれでもなお満足できる音にできるかということを考えると、ハードオフオーディオサロンで展示されているプロの整備費用込みの価格がいかにリーズナブルかが分かる。しかも、店頭なら試聴ができるので、自分でしっかりと納得した上で買うかどうかを決めることができる。整備済とはいえ、古いものは購入後に不具合が起きることもゼロではないという、しかしながらハードオフでは3ヶ月ないし半年間の保証がついている。保証期間内であれば無償で可能な限り修理に応じてくれる。これ以上のコスパがあるだろうか。

聞きたいけどなかなか聞けない値付けの疑問

ここまでの取材で、ハードオフオーディオサロンのリペアに対する姿勢や、その技術力の高さに触れることができた。

その上で、聞きにくいことだが、そこをあえて聞いてみたいのが中古の値段だ。ハードオフとしては、最初にお客様から買い取るための買い取り金と、修理部品代と人件費がかかっている(その他にもかかっている費用はあるだろうが)ということになると思われる。それからどう計算して販売価格は付けられるのだろうか、せっかくなので宮澤店長に聞いてみた。

「例えばこれ、テクニクスのアンプですね。定価100,000円に対して、中古売価は60,000円(税込66,000円)。これだけ見るとそんなに安くないように思われるかもしれないですね。しかし、修理をしっかりやると結局50,000円以上は実際にかかっているんです。普通の業者さんなら、10,000円の利益のためにそこまではやらないじゃないでしょうか。それゆえに、こういう商品は相場が出ないんですね。うちも外注をしていたら経営的に無理ですが、内製でやっているので、この値段が出せています。

テクニクス1980年式のプリアンプ「SU-A6」。インターネットで探せば安い中古の未整備品はたくさん出てくるかもしれないが、部品も交換して、プロがしっかりと整備したものとでは耐久性や音で随分と差が出てくることだろう。

最近では、他社が手が出せないような、正直あまり利益になりづらい低単価な商品や市場取引の少ない商品だったとしても、整備して『付加価値を付けて販売しよう!』とスタッフ間で話しています。実際、オークションなどでも5,000円から高くて2~3万円程度の、いわゆるジャンク品でしか出てこないようなSANSUI 製のレシーバーアンプを当店で整備して、132,000円でネットに載せてみたんですね。これがなんと翌日に売れました」と語ってくれた。

前回の取材時に撮影したSANSUIのプリメインアンプ。値段にも、ハードオフオーディオサロンの「付加価値」を加味して付けられていることがわかった。

また、できるだけ同じ機種やメーカーを集中してやるといった作業効率やバランスも工夫しているという。部品類も、入手できるタイミングに多めに手配したり、場合によっては海外の専門部品メーカーから直接仕入れて用意したりするなど、地道な企業努力もなされている。

海外の専門部品メーカーから直接仕入れたパーツ。パーツ単位で製品を熟知しているからこそ、潤滑な修理のために部品手配方法にも工夫がなされている。

昨今の状況下、なかなか外出もままならないが、ハードオフオーディオサロンの通販サイト「NetMall」も随時更新されており、遠方の方でも商品は入手可能だ。状況が落ち着いたら、是非ハードオフオーディオサロンへ立ち寄ってみてほしい。


今回の取材に応じていただいた熟練のエンジニアたち。左から、アンプ全般担当神野太郎氏、カセットデッキなど駆動系担当大林俊之氏と、ターンテーブル、アーム調整全般の修理担当兼店長の宮澤康久氏。

リペアこぼれ話

長らくさまざまなリペアをやっていると、回路図や配線からそのメーカーの歴史の内側をうかがい知る瞬間があるという。老舗の名門メーカーでも、「この時代は試行錯誤してたんだな」と見ていて伝わってくるという。当然それが、音に影響してくる。

「このメーカーのこの時代の音は、妙にいい」あるいはその逆を感じることがあったら、もしかしたらそれにはこういったメーカーの事情が実は裏に隠れているのかもしれない。

これまた面白い話だが、日の目をみなかった機種も重要なポイントをいくつか整備するだけで見違えるように良い音になることもあるらしい。

また、年代物のアンプなどで過去に修理をしたことがある場合も、「あ、この修理のときにこの部品を替えたからこういう音になってるんだな」と、その修理の履歴を読み取ることもできるという。まるで刑事ドラマの現場検証だ。部品は物を言わずとも、その機器の歴史を雄弁に語りかけているということなのだろう。もっとも、語りかけてくれるようになるまでには相当の経験が必要となりそうだが……。


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これまでの取材記事もチェック!

▲2021年7月公開記事
古いものも新しいものも楽しめる ハードオフオーディオサロン吉祥寺店

▲2021年8月公開記事
マークオーディオ代表中島氏も唸る! ハードオフオーディオサロンのスピーカーリペア技術


ハードオフオーディオサロン吉祥寺店

●住所:〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町1-4-27 アソルティ吉祥寺エスト3F
●電話番号:0422-27-6891
●営業時間:11:00 ~ 21:00( 土日祝は10:00 ~ 21:00) 
●定休日:年中無休 

●アクセス:JR中央線・京王井の頭線「吉祥寺駅」から徒歩約7分。吉祥寺サンロード商店街の突き当たり左手。道路渡った向かい側。五日市街道沿い。モードオフ吉祥寺店隣り。

● ホームページ:https://www.hardoff.co.jp/shop/detail/?p=101079
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