聴いてみた! WAF高めスピーカー「MICRO_NC4 ピーラーコンビネーション」

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WAF (Wife Acceptance Factor) 、直訳すると「妻の承認係数」。つまり、オーディオを導入する際に、奥様やパートナーに受けられやすい係数という意味だが、この「MICRO_NC4 ピーラーコンビネーション」はかなりWAF高めのスピーカーとしておすすめしたい。

「オーディオをもっと広げていくためには女性にも受けられるスピーカーが必要だ」と日ごろから訴えるフィディリティウムサウンド中島氏は、部屋に置いても家具のように違和感なく溶け込み、それでいてしっかりとした音を楽しめるというコンセプトで本機を設計したとのことだが、なるほど見た目にも可愛らしく、お洒落だ。よく見ると側面には減衰特性に優れたスプルース、天板・フロントバッフルには米松(ピーラー)を構えており、その華奢な見た目に反してかなり本格的なスピーカーであることが分かる。


実際に女性の目線で見たときにどうなのだろうか。stereo2月号でも同商品(のスピーカー違い)を紹介してくれた飯田有抄さんを招き、本機の印象を尋ねてみた。「私もどんどん女性にオーディオを楽しんでもらいたいと思って仲間を探しているところなんですが、そのときに小さくて軽いというのは大事ですよね。そしてお部屋に素敵に置きたいというのがあるんです。その点、このスピーカーはサイズはばっちり。そして木目やナチュラル志向が受け入れられそうですね」とその第一印象を語ってくれた。

最初の試聴には「究極のオーディオチェックCD2023」を使用した。収録されている夏蒐山修廣寺の大鏧の音を聴いて思わず「減衰が気持ちいい! 残響をきちんと聴かせてくれる。鐘の一打だけなのに音楽として浸れる」と、盤の録音の良さとスピーカーのポテンシャルの高さに関心していた。この模様は動画でも視聴可能なので、是非こちらもご高覧いただければ幸いだ。

ところで本機の特徴のひとつとして、枡に使用される日本の伝統的な組手である「あられ組み」を採用していることが挙げられる。この点について中島氏曰く「日本酒飲みたくなるでしょ(笑)。トンカチで叩いてぎゅうぎゅうに締めるんです。もちろんその後ちゃんと削ってきれいに仕上げますが、しっかり締めると共振を防いでくれるようになります。話は逸れますが、自作する人はハタガネできちっと締めるのは絶対やってほしいですね。一度、しっかりと締めるのとそうでないのとを生形三郎さんに比較試聴してもらったことがあるのですが、彼も『こんなに違うの?』って驚いていたくらい、音に影響しますから」とのこと。


さて、ここからは、各自持ち寄った推薦盤を本機で試聴してみることにした。以下、対談形式・敬称略でそのときの模様をお伝えする。

中島氏試聴盤
グレン・グールド『バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)』
#1 「ゴールドベルク変奏曲 BWV988 アリア」

飯田:グールドのデビュー盤も「ゴルトベルク」でしたが最後のアルバムもゴルトベルク」でしたね。聴き比べも楽しいのですが、今回中島さんが持ってきてくれたのは1981年録音、つまり最晩年のものですね。めちゃくちゃかっこいいんですよね。

中島:この演奏をテレビで演奏を見てびっくりしました。それですぐに探して買ったものなんですけどね。すごいジャズに通ずるものがあると思うんです。

飯田:出たばかりの頃はすごいセンセーショナル扱いされたほどの名盤。最近ではさまざまな解釈が出てきて「当時のバッハってどうだったか」という研究に基づいた演奏をいろいろな人がどんどん試みているわけですけれど、いろいろな解釈のバッハが勢揃いして、結局一周まわってまたグールドに戻って「やっぱりいいね」っていうふうにクラシックの世界でもなってるみたいですね。

中島:ほかの人に影響されていないですよね。完全に自分の「モノ」がある。

飯田:ちゃんと自分とバッハとの対話の中で作っているから、ものすごい説得力があるんですよね。

中島:みんなそれぞれ自分の世界があって、音楽を表現する色というものがあるけれど、この人の場合は特にそれが強烈ですよね。


飯田氏試聴
小山実稚恵『モノローグ』
#2 「ブラームス:ワルツ第15番変イ長調 作品39-15」

飯田:じゃあ、ピアノで来たのでピアノ返し。これがめちゃくちゃ素晴らしくて、「レコード芸術」誌のレビューを書くときにサンプル音源をお借りして書くんですけど、あまりに素晴らしいのでちゃんと自分で買いました! 19世紀の終わりのちょっと古いピアノを使って録音していらっしゃるんですね。

中島:やっぱりピアノの音色に特徴があるんですか?

飯田:ものすごくあります! ご自宅で録音されたということで、もちろんエンジニアさんとか本格的に体制を組んでレコーディングをされたと思うんですけど、自宅のくつろぎ感と、ピアノのなんとも言えない歴史的ななんとも言えない甘い音と、小山さんのリラックスした深い音楽。それらの組み合わせが素晴らしいんですよね。

中島:こういう話が価値あるんですよ(笑)! それにしても、随分ピアノの響きが違いますね。

飯田:ノスタルジックな音と言えばそれまでなんですけど、19世紀のピアノって木材が今とは全然違っていて、ふわ〜って上に伸びていくような甘い感じの伸び方をするんですね。先ほどのグールドの80年代はピアノの音をブリリアントに録るのがクラシックの流行りだったと思います。ですが、今はこもった雰囲気とか、わりと近くで聴いているような、ハンマーのフェルトの柔らかい雰囲気とか、そういうのを出そうという録音が増えてきていて、それを極める感じの録音になっていますよね。ピアノは古いけれど自宅ということもあって、ホールの残響がどうとかいう世界ではないピアノ。「あ、小山さんが私の自宅で弾いてくれてる!」みたいな、そういう録音を楽しめる一枚なんですよね。


中島氏試聴
ジャシンタ『Autumn Leaves』
#11 「Here’s to Life [Soundtrack Mix]」

中島:次はヴォーカル行きます! このスピーカーの口径(6cm)って、口と同じサイズになるので、ヴォーカルによく合うんです。

飯田:確かに口を開けたときと同じサイズだ! 無理ない大きさなんですね。

中島:ちょっと悲しげな感じで、しんみりしちゃいますね。

飯田:いい声だね。息の感じと声の音色の変化をはっきり出してくれるから無理のない感じ。

中島:こういう雰囲気の曲ですから、あまりボリュームを上げない状態でしっとり聴きたいですね。


飯田氏試聴盤
Kitri『Kitrist II』
#1 「未知階段」

飯田:じゃあ、声繋がりでKitri(キトリ)という二人組みの一枚。これは姉妹でピアノを連弾しながら歌うという、最初は大橋トリオさんがプロデュースしていたみたいなんですけど、なんせ声もいいし、曲もいいし、うまいしで私が大好きなお二人のアルバムです。

中島:いいですねー。

飯田:かわいいでしょ? けっこうアレンジ効いてて、ピアノや打楽器、ストリングスまでいろいろ入ってるんですけど、全部きちんと聴こえて楽しいですね。

中島:若い人に是非こういうのをちゃんとしたスピーカーで聴いてみてほしいですね。


中島氏試聴
ビル・エヴァンス「Everybody Still Digs (5CD)」
#4 「Autumn Leaves」

飯田:おっ!渋い感じ!(少し小さめのボリュームで)このくらいの大きさで作業とかしたい。

中島:普通の演奏だとリズムがあって、メロディー楽器があってという感じで演るんですけど、ベースのスコット・ラファロとエヴァンスの場合は、お互いがあるメロディを弾いていて、パッと止まるとこっちが弾いてるみたいな掛け合いがあって、他の人たちじゃできないような、ひとつ上のレベルに行っちゃってるプレーヤーたちですね。

飯田:落ち着く。こういう音。


飯田氏試聴盤
徳永兄弟『NEO FLAMENCO』
#1 「ブレリア・デ・パドレ」

飯田:じゃあ、ラスト一枚!これ気に入りすぎてあちこちで紹介しておりまして……ちょっと紹介しすぎなんじゃないかと思ってるんですけど、徳永兄弟というフラメンコギターのお二人。めちゃくちゃ音がいいし、めちゃくちゃギターもうまいしで、びっくりするのをここで聴いてみたいなと。

中島:ほう!

飯田:……というテンションでずっと行くアルバムでして、演奏がうますぎて全部ちゃんと聴くとけっこう疲れます(笑)。でもすごい面白い、いいアーティストが出てきたなという感じで気に入っております。


ということでそれぞれ3枚ずつ、合計6曲分を試聴したところで実際に聴いてみての感想を飯田さんが「小さいのにパワフル。軽やかで扱いやすくて見た目がかわいいですが、実際の音はエッジが効いているし、減衰の美しさもあるし、粋が詰まっているものが家にあるという幸せをかみしめますね」とまとめてくれた。

実際、さまざまなジャンルの曲を試聴したが、このサイズのスピーカーであることを考慮しても一般家庭で聴く分にはまったく問題はないだろう。音も聞き疲れしないクオリティで、どのジャンルでも楽しく鑑賞できた。これなら奥さんやパートナーにも必ずや気に入ってもらえるに違いない。


※「カートに入れる」の表示がない場合は、一時的に品切れ状態となっています。

スペック
・寸法:(約) よこ99mm × たて200mm x 幅122mm ※突起部を除く
・方式:バスレフ型
・材質:スプルース無垢材、ピーラー(米松柾目)※バッフル・天板に使用
・付属スピーカーユニット:マークオーディオ製 6cmフルレンジスピーカーユニット「OM-MF4-MICA」

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