故・長岡鉄男氏の呼び掛けにより発足したオーディオサークル「ミューズの方舟」主催の「自作スピーカーコンテスト(旧称『サウンドフェスティバル』)が、去る2018年12月9日(日)に東京の品川区で行われました。
今年は「スキャンスピーク 10F/8414G10を1発」というレギュレーションのもと、個性あふれる力作8作が披露されました。来場者には事前に投票用紙を渡され、この中から「音質」「アイディア」「ルックス」の3項目で1作品のみ自分がよいと思う作品に投票するというシステムが採られています。そして、前述の3項目を合計した「総得点」も表彰の対象とし、合計4部門での賞レースとなります。
▲来場者も審査員として投票するシステム。さあ、今年はどのような結果となるのか・・・。
浅川法之氏作『COOL6』
2個対抗型のドロンコーンを内部に設置。低域の補強およびドロンコーンからの中高域の放射による音像定位の乱れを防ぐための工夫として、側面から後方へ向かって6の字型に音を逃がす形が採用されている。その形と、寒色のペイントから連想される「クール」が作品名の由来となっている。
八杉幸浩氏作『LEGOスピーカー69号機』
その名の通り、レゴブロックで作成された内部補強構造のフロントホーン・バスレフ方式スピーカーシステム。特別な工具も必要なく、部屋を汚さず、怪我もせず、パーツを組み替えるだけで気軽にいじって遊べる、しかもオーディオ理論的にもかなっているという特性を最大限に活かしている。
田中博志氏作『CORE壱号』
10mm厚のアクリル板を使用し、SDM(System Direct Mount)方式と、サーボ・パッシブ・ラジエター方式を採用。パッシブユニットを3本、ドライバーと合わせて4本、前後左右に配置。中心の一点(CORE)からエネルギーを発するイメージで、ブレのない力強い低音再生を狙う。
白須俊明氏作『CLCL8 DB-2改』
ダブルバスレフ和紙太鼓スピーカー。ダブルバスレフの第一室はボックス構造とし、第二室の側面・背面は大きくくり抜いて江戸唐紙の最高級手漉き和紙を貼付。スピーカーの振動を制振するのではなく、あえて振動させることで減衰させるという考えのもと、タブーを承知で挑む意欲作。
谷本裕昭氏作『ザウルスBSP-2018』
小型・軽量のバッフル型後面開放スピーカーシステム。スピーカーユニットの振動板に追従して振動するバッフル盤面構造で、B2サイズの紙とスチロール合板を接着剤を使用せず、折り曲げるだけで組み上げたフルオープン構造。キャビネットの表面には「工芸うるし」を数回塗布している。
渡邊倫宏氏作『VIBRA-ARK』
岡山にて創作家具・アンティーク家具修復工房を営む氏の、職人らしい細部まで繊細な配慮が施されたステレオ一体型コンビネーションホーン。贅沢にもオーク、ローズウッド、マホガニーの無垢材を使用。手触り、見た目、機能的にも家具であると同時にもはや楽器。
※『VIBRA-ARK』は販売もしているそうです。詳細はお問い合わせください。
Master of Salvage
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『VA030』(限定生産品)前面板・反射板:ローズウッド 320,000円(税別)
『VA031』 前面板・反射板:カリン(共にローズウッド仕上げ) 240,000円(税別)
『VA032』 前面板・反射板:タガヤサン 220,000円(税別)
W1140 × H350 × D280mm(脚部130mm)
河野雅幸氏作『K-83 鬼斬 Ver.2.0』
広島より参戦。学校の音楽室の環境をスピーカー内部に持ち込んだという、見た目にもインパクト大な「食欲を刺激するスピーカー」。Stereo誌の「工作人間」でも掲載実績があるという初代『鬼斬』のセルフカバー作品で、鬼のように鋸溝を切り込む作業から作品名が付けられたという逸話も。
河辺倉司氏作『SIDBR31W4』
こちらは愛知より参戦。密閉型エンクロージュア内にポリプロピレン製のドームバスレフを取り込むことで、バスレフの欠点でもある歪みの解消を試みたモデル。使用木材はフローリング用の合版。サイズも小さくシンプルな構造ながら、スーパーウーファーを必要としない重低音を目指す。
以上が配布された資料をもとにした簡易説明となりますが、この8作品の中から来場者による「音質」「アイディア」「ルックス」のそれぞれの分野で最もよかったものに対し一票ずつの投票が行われます。さらに、それらを合計した「総得点」の多かった人が表彰されます。
結果は・・・
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「音質」河野雅幸氏作『K-83 鬼斬 Ver.20.』 「アイディア」白須俊明氏『CLCL8 DB-2改』 「ルックス」河野雅幸氏作『K-83 鬼斬 Ver.20.』
そして、総得点での受賞は「音質」「ルックス」で圧倒的投票だった 河野雅幸氏作『K-83 鬼斬 Ver.20.』となりました!
「アイディア」の分野で受賞された白須氏は、昨年の作品『アルプス』で「ルックス」賞に続いての受賞でした。そして、来場者のほぼ全員が「音質」「アイディア」「ルックス」のいずれかに投票したのではないかと思ってしまうほど、圧倒的な得票だったのが河野氏の作品『K-83 鬼斬 Ver.2.0』でした。それぞれの分野で一票ずつしか投票できないシステムであるにも関わらず、複数の分野で受賞できたのは、河野氏が元ギタリストだったという「耳」と、印象的なルックスを両立させ得た技術のなせる「業」だったのかもしれませんね。最後は「鬼」が笑うという結果となりました。
受賞のコメントの際に河野氏が、実は先の豪雨で被害を受けてしまったという話をされていました。今回は地方から参加された方も多く、少しでもよいニュースを故郷に持ち帰っていただけたらと思うばかりです。
>ミューズの方舟のサイトはこちら
※ここに紹介したイベントは「ミューズの方舟」主催の自作スピーカーコンテストです。音楽之友社主催の自作スピーカーコンテストは、2019年2月23日(土)に神楽坂「音楽の友ホール」にて行われます。