新感覚オーディオクラフト 俺流スピーカー!邪道を往く 番外編

スポンサーリンク
8月号(工作増大号)
スポンサーリンク

  付録マークオーディオユニットで邪道ミニスピーカーに挑戦

はじめに

本コーナーは、stereo編集吉野が個人的に家で使いたいスピーカーを作るという、完全に公私混同企画である。実際に家で使うにあたり、デザインを最優先で設計し、音が良いとされているセオリーや測定、計算は無視。王道のスピーカー工作から、あえてはみ出していく邪道スタイルで、感覚的に作り上げる。

製作する上で様々な比較試聴実験をし、耳だけで判断していくことで、オリジナリティ溢れる、超個人的なスピーカーを作りたいという連載である。協力者は、木について果てしなく造詣が深い家具職人 岸邦明氏。そして仕事柄、自作、製品、問わず様々なスピーカーを毎日のように聴いているステレオ編集部吉野とで、製作のプロと、経験値ある編集者による、世界でオンリーワン&ナンバーワン(個人的に)のスピーカーを目指すのが「邪道」スピーカークラフトコーナーだ。なんとか今のところ上手くいっているので、興味がある方はstereoのバックナンバーを参照していただきたい。

stereo 8月号は工作号ということで、同時発売のMOOKマークオーディオのフルレンジを使って、今まで本連載の実験で得てきた経験とコンセプトをフル活用し、邪道小型スピーカーに挑戦したい。さらに、うまくいった暁には、ONTOMO Shop で販売しようという目論見だ。


邪道ミニスピーカー 設計のコンセプト

その1.凡百なスピーカーデザインから脱却する

前述した通り、スピーカー設計はデザインから入る。部屋に置いておきたくなるもの、インテリアになじむ自然な雰囲気を最重視し検討した結果、正方形のバッフル形状とした。またユニットをセンターからずらし、空気抜きの穴を対局に配置することで、デザインのバランスを取った。

その2.音の純度を最優先し、可能な限りシンプルにストレスフリーに設計する。

今回使用するマークオーディオのユニットは、前後の振幅を大きくとることによって、ふくよかな低音が実現している。本来は密閉で設計したいところだが、内圧でユニットの動きが悪くなることを懸念し、かつ音は前に向かってきて欲しいので、フロントに空気抜き穴を設けた。現在のスピーカー工作では当然行なわれている、内部補強や吸音材、面取りなどの加工は行なわず、容積の調整だけで最も良くなるポイントを試聴し耳で判断する。もちろん測定や計算などは一切行なわない。

その3 無垢材の響きを利用する

本連載の経験から、無垢材の響きは何者にも代えがたい魅力がある。また、岸氏は無垢材の特性を知り尽くしたプロフェッショナルでもある。無垢材の響きを取り入れるために、バッフルは30㎜厚の無垢材を使用する。本来はオール無垢材で行きたいところだが、コストがかかりすぎるので、その他のキャビネットの部分は、過去の実験結果から好印象だったパーチクルボードを使用し、コストダウンを図る。

以上のコンセプトを踏まえた上で、ベストな音を探るべく、実験をした。
▲ 邪道ミニスピーカー構想の図面
立方体のデザインが理想的だが、容積は聴いて調整するため、試作機では、後ろを長目に作る


DAY1. 実験材料を組合せてベストな仕様を探れ!

ざっくりとしたデザインとコンセプトが決まったところで、素材の検討、細かい調整、にとりかかる。今回実験用に用意した素材は以下

・バッフルの無垢材の素材を検討(メープルとブラックウォールナットの比較)
・パーチクルボードの板厚を検討(15㎜と9㎜)

エンクロージャーは少し大きめに設計し容積は裏板を動かせるようにして、聴感上でだいたい良いバランスのところで合わせ、これらを交換して聴きながら、ベストな組合せを探った。容積の最終微調整は、仕様が決定した後に行なう。

岸:邪道小型スピーカー用に実験素材を用意しました。これらを組み合わせて聴いていきましょう。我々の今までの実験経験が小型スピーカーでも発揮されるのか楽しみです。

吉野:小型でも無垢パワー全開の、豪快なスピーカーになるといいですね。

岸:では、いきなり大本命の組合せから聴いてみましょう。多分これが音もデザイン的にもベストな組合せじゃないかな。バッフルはブラックウォールナットの無垢、キャビネットは15㎜厚のパーチクルボード、オイル仕上げです。これで終わっちゃったらスミマセン。(笑)

吉野:かっこいいですね。これは音が出る前から既に欲しいです。

【試聴】ブラックウォールナット(バッフル)+パーチクルボード(15㎜厚オイル仕上げ)

吉野:ごっつい音ですね。鳴りがさすが無垢って感じです。でも…

岸:あれー、なんかイマイチだな。

吉野:音にまとまりがない。音の濃さはいいんですが、なんか鳴りきってないような。パーチクルの15㎜が厚すぎるのかな。

岸:9㎜に変えてみますか。

【試聴】パーチクルボードを15㎜厚から9㎜厚に変更

岸:さっきよりはいいですね。全体的に豊かに鳴ってきました。僕の好きな方向です。

吉野:そうですね。緊張感ある音が、適度にほぐれました。キャビネットは9㎜厚の方が良さそうですね。でもまだ、ベストとは言えない。音が全体的にボケているというか、もっとはっきりと聞こえてほしい。ブラックウォールナットのせいかな。バッフルをメープルに変えてみましょう。

【試聴】バッフルをメープルに変更

吉野:デザインの雰囲気が大分変りましたが、これはこれで悪くないですね。音に関してはしっかりとピントがあって、大分よくなりましたね。これでようやく音楽が聴けるレベルになってきた。

岸:そうですね。バッフルにはメープルがいいんですね。メープル特有の明るさというか明快な音ですね。

吉野:ただ、僕的には音が明るすぎるかな。もう一味欲しい。スピーカーのベースにウォールナットを入れて、ダークな渋い音を加えましょう。

【試聴】スピーカーベースとしてブラックウォールナットを追加

岸:メープルの明快さに、ウォールナットのずっしりとした音がいい感じにマッチしましたね。やっぱり異素材を組み合わせるといいんだ。

吉野:これで大分満足度が高い音になりました。あとは、細かい微調整でさらに追い込んでいきましょう。今回の実験で、仕様はバッフルはメープル、キャビネットはパーチクルボードオイル仕上げ9㎜厚に、ブラックウォールナットのベースという組合せで決定ですね。これで徹底的にエージングをし、後日、容積を徹底的に追い込んでいきましょう。

▲ バッフルはブラックウォールナットメープルを用意(30㎜厚)。キャビネットはパーチクルボードの9㎜厚と15㎜厚のオイル仕上げを用意し、組み合わせて聴いていく


▲ 後ろ板は動かせるようにして、容積を調整しながら聴いていく

▲ 大本命のブラックウォールナットバッフル+パーチクル15㎜厚を聴く


DAY2. ミリ単位で変化する音世界

3週間後 アクロージュファニチャー工房にて

岸:ほぼ毎日鳴らしてきました。かなりいい感じですよ。聴いてみてください。

【試聴】『デイブ・ブルーベック/Take Five』

 ▲「デイブ・ブルーベック・トリオ/TIME OUT」から『TAKE FIVE』を試聴。アコースティック楽器のフィーリングはバッチリだ

吉野:あれ、これってこんなに迫力ある音源だったかな。音が生きいきしている。シンバルのリズム、ウッドベースの絡み合いが気持ちいいですね。小型スピーカーを超えた大きな、鳴りっぷりです。僕が持ってきた「ハービー・ハンコック/Fat Albert Rotunda」を聴いてみていいですか。エレクトリックな楽器だと、どうなるんだろう。

【試聴】「ハービー・ハンコック/Fat Albert Rotunda」

▲「ハービー・ハンコック/FAT ALBERT ROTUNDA」から『Wiggle Waggle』を再生。タイトなグルーヴ感を表現したい

吉野:あれれ、とっ散らかっちゃいましたね。エレクトリックベースでは、低音が飽和して音がボンついてしまいました。音がたくさん重なった時に各楽器が潰れずに再生できないとだめですね。裏板を5㎜ずつ内側に押し込んで容積を小さくし、聴いていきましょうか。

【試聴】裏板を5㎜ずつ内側に押し込む

岸:15㎜あたりで音が引き締まってフォーカスしましたね。でも低音感や響きが減って窮屈な音に感じます。ちょっと締まりすぎかな。

吉野:さっきよりはいいですが、確かに開放感がもう少し欲しい。2㎜元に戻してみましょうか。

【試聴】裏板を2㎜戻す

岸:いい塩梅じゃないでしょうか。しかし、僅か2㎜で大分変わるもんですね。容積にして60cc程度ですよ。

吉野:たったの60ccでここまで変わってしまうなんて恐ろしいです。普通だったらここで吸音材を入れたりして細かく調整するんでしょうが、邪道スピーカーは音の鮮度重視。吸音材はなしでいきたいので、ミリ単位で攻め切りましょう。リスニング環境でも変わる可能性があるので、僕の自宅でも試してみましょう。

>>>> 吉野宅へ移動

岸:同じソフトで聴いてみましょう。吉野さんが今使ってるメインスピーカーより良くなってほしい。

【試聴】「ハービー・ハンコック/Fat Albert Rotunda」

吉野:かなりいいですね。でも、まだ若干うるさい感じがありますね。1㎜広げてもらえませんか?

【試聴】1㎜広げる

岸:きましたね。ボディ感と解像度が絶妙にバランスしています。

吉野:驚きです。1㎜でもどえらく変わるもんですね。容量たったの大さじ2ですよ。曲を変えてみましょう。これがグル―ヴィに鳴ったら合格です。ニール・ヤング&クレイジーホースの「Fuckin’ Up」。このカオスな爆音が気持ちよくなるか。

【試聴】『ニール・ヤング&クレイジーホース/Fuckin’ Up』

▲ 「ニール・ヤング&クレイジーホース/傷だらけの栄光」から『Fuckin’ UP』を再生。この曲が気持ち良く鳴ればOK

岸:なんですか、これ!? ヘビメタですか? とにかく、気持ちいいですね。

吉野:素晴らしい。我が家のスピーカーよりいいです。ギターノイズの海の中で、しっかりとドラム、ベース、ボーカルが定位している。しかも音は濃厚で生生しい。音楽の世界に自然に入り込めます。これに替えます。ついに完成ですね。

岸:今回もうまくいってホッとしました。邪道連載の経験から音の変化の傾向や仕組みが大体わかるようになってきました。

吉野:邪道スピーカーらしい、唯一無二な音に仕上がったと思います。ありがとうございました。

▲ 接着されたバッフルを交換するため、ハンマーで叩く岸氏

▲ バッフルをメープルに変更。雰囲気はガラリと変わる


▲ スピーカーベースとして、ブラックウォールナットを追加する。デザイン的にもいいコントラストだ

▲ 破綻はないか、様々なジャンルを聴きまくる


ONTOMO MOOK『これならできる特選スピーカーユニット 2019年版マークオーディオ編』対応、邪道ミニスピーカーJD-02 をONTOMO Shopにて受注生産で販売しています。
俺流ミニスピーカー JD-02
【完成品】本体ペア 125,000円(税抜)
(オプション 塗装仕上げ済み無垢スピーカー台 +50,000円(税抜))
【キット】本体ペア 60,000円(税抜)
(オプション 塗装仕上げなし無垢スピーカー台 +20,000円(税抜))




制作したアクロージュファニチャーでは、2019年8月末までの期間限定で、試聴機を設置しています。試聴希望の方はアクロージュファニチャーまでお問い合わせください。なお、イベントなどで持ち出していることがあります。

・2019年7月27日(土)・28日(日)に大阪日本橋の共立電子で行われるstereo×パイオニア×共立電子 3社共催クラフトオーディオイベント 2019夏でも展示・試聴予定。

タイトルとURLをコピーしました