歴史的高音質復刻版試聴記  炭山アキラ

オントモビレッジで予約受付中の、幻の金属原盤から復刻する高音質LPの試聴レポートが届きました。締め切りまであとわずかです

ALL Blues; ROY AYERS QUARTET

ダイレクトの音質的美点が聞こえる
焼け付くような緊張感

日本コロムビアの棚に残されていた1960~70年代のLPレコード金属原盤から再びレコードをプレスしようという、何とも壮大なプロジェクトである。ロイ・エアーズ・カルテットの音源は45回転のダイレクトカット、1969年の録音である。針を落とすと、ドラムの気合一閃から音楽が始まり、ヴァイブとエレキギター、ウッドベースの火花散るパッセージがまさに眼前で展開される。これだけのオンマイクでありながら歪みは微塵も感じさせず、また楽器の実体感、というよりはもう生命の爆発のようなものが肌をヒリヒリと焼いていくような緊張感が全編を支配している。これはテープなどの録音媒体を経ないダイレクトの音質的美点でもあり、また、録り直しが効かない一発勝負の演奏ゆえに一層凝縮された緊張感と、それによって起こったアーク放電のようなきらめきが洩れなく収められているからであろう。特にダイレクトの時代を知らない若いマニアにぜひ聴いてほしい。

サムシング/スティーブ・マーカス+稲垣次郎とソウルメディア

荒削りな部分もあるが、それよりも
音の鮮度、パワフルさが尋常ではない

世界初のデジタル録音機構は日本コロムビアが開発した、ということはよく知られているが、当時の音は一体どんなものだったのか。その後何度もLPやCDで復刻された音源が多いが、LP時代は多くがサイマルで回されていたアナログテープからの復刻、CDの時代を迎えると今度は24ビット化などによる高度デジタル復刻が主となり、「当時そのままの音」を聴く機会は極めて少ない。この盤は1971年に発売された世界初のPCM録音盤の、金属原盤よりの再プレスである。当時の品位は32kHzサンプリング/12ビット折れ線というから、高域はいいところ15kHz止まり、ダイナミックレンジも実用上70~80dBといったところであったろう。音を聴くと確かに荒削りな部分もあるが、それよりも音の鮮度、パワフルさが尋常のものでない。fレンジも十分に広く、むしろ屈託なく伸び、噴き出してくる音の洪水に身を貫かれる快感を存分に味わわせてくれる。素晴らしいクオリティだ。

打!-ツトム・ヤマシタの世界

「諸君、脱帽したまえ。天才が現れた」と
評価された歴史的な音源

こちらも1971年録音、伝説の「ツトム・ヤマシタの世界」である。初版クオリティでまさかわが家でかけられる日がくるとは思っていなかった。A面は超難曲をヤマシタが生きいきと、楽しみながら演奏しているさまが伝わってくる。再生至難なのはむしろB面だ。とにかく超ハイスピードかつパワフルで「堅い」音に心身とも吹っ飛ばされるような演奏と録音である。f/Dともレンジに全く不足は感じない。むしろ、現代になぜこれほど演奏者の「魂」を感じさせる録音がなかなか輩出しないのか、そっちの方が気になってしまった。この盤を聴くと、故・高城重躬氏がショパンを見出したときのシューマンになぞらええて、生まれたばかりのデジタル録音盤を「諸君、脱帽したまえ。天才が現れた」と評価されたことの意義が伝わってくる。可能な限りハイスピードかつパワフルな装置で、生の音量まで上げて聴きたい。オーディオマニアなら、避けて通るわけにいかないだろう。

上記3枚はオントモビレッジにて予約中(8月10日締め切り)
https://www.ontomovillage.jp/ontomo/kau/list.html